翡翠の森

《レジーには、ロイを恨むしか術がないんだ。たとえ、ロイのせいじゃないと理解していても》


(そんな……)


どうして。
理由を尋ねかけ、すぐに思考を打ち消した。
マロに届いていないことを祈りながら、最悪の想像を懸命に振り払う。


(ロイ……)


当たっていないといい。
考えすぎだと笑ってほしい。
マロは何も言わないけれど、質問をやめたのだから当然だ。
でも、もしもそうなのだとしたら。

家族を失う悲しみは、ジェイダには分からないかもしれない。
そもそも、最初からいないのだから。


(それでも、側に行きたい)


許されるならば、隣にいさせてほしい。


《気をつけて。ジェイダに何かあれば、もうどうにもならないかも》


クスッと笑ったきり、マロの声は聞こえなくなった。


「こうなったら、直談判するしか」

「しかし、あまり大事にすれば、ロイ様のお立場が……」

「どちらにせよ、このままではご不在がバレます」


放心していると思われたのか、二人だけで話し合いが進んでいたようだ。
動くか動くまいかで揉めている彼らの間に入り、ジェイダは宣言した。


「私が行く」

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