翡翠の森
目に飛び込んできたのは、とても信じられない光景。
ロイの喉に、ぴったりと切っ先が突きつけられている。
「……っ、ロイ!! 」
恋人の名前を叫べば、呼ばれたロイはもちろん、レジーもハッと立ち竦んだ。
「ジェイダ! 」
レジーに迷いが生まれた隙に、間に身を滑り込ませる。
そして、すぐに膝をつくとロイの首にしがみついた。
「ロイっ」
赤い雫が喉を伝う。
殺すつもりなどないと信じたいが、それでもレジーの剣がロイを傷つけたのだ。
レジーの苦しみも分かる、など、ジェイダの立場では軽々しく言えない。
(でも、こんなのダメだよ)
「どいて。……危ないよ」
もう長い時間、会っていなかった気がする。
なのに、ロイは落ち着き払っていた。
(離れない。絶対に)
首を振り、抗議する。
「いや」
安心したのか、それとも切ないのか。
ジェイダは混乱した。
どうして、抱きしめてくれないのだろう。
どうして、抵抗しないのだろう。
後ろ手に縛られているからだと知っているのに、頭の中がぐちゃぐちゃだった。