翡翠の森

「祈り子が落ちたというのは、本当らしいな」


涙を拭かなくちゃ。
そう思うのに、体が動かない。
その為には、彼に回した腕を解かなくてはいけないから。


「一緒に切られれば本望か? 」

「レジー!! 」


ロイが怒鳴り、何とか振り払おうとする。


「ジェイダ! 下がれ!! 」


いつもの、自分用とは異なる言葉遣い。
だが、ジェイダは離れなかった。


「退かないし、下がらない。死んで本望、なんて言わない」


頬を濡らした涙が乾き、ヒリヒリする。
その上から、新な涙が溢れるの繰り返し。

痛くて、痛くて。
時々、麻痺したとしても。


「私も、ロイも。諦めたりしない」

「ちっ……ったく……! 」


こうなったら言っても聞かない。
どうやら学んだらしいロイが、らしくない舌打ちをしたが、ジェイダはそれすらも無視した。


「レジー、君が憎いのは僕だろ。ああ、キャシディでもいい。この子を引っ剥がしてくれ」

「そのままの方が、安全なんじゃないか」

「男として耐え難い上に、彼女に何かあろうものなら情けなさすぎて死ぬ」


場違いな会話をしているが、レジーの表情は硬いままだ。


「……ちょっと……」


それを見れば、やはりロイから離れるわけにはいかない。


「何で君は、そう言うこと聞かないの! 危ないからどけって言ってるだろ!? 」

「ロイこそ、聞いてた!? 嫌って言ったわ!」


意地でも離すものか。

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