翡翠の森

「何だって!? 」


動き出した、とはどういうことだ。
攻めてくる?
クルルに?


「お前もろとも、クルルを潰そうと言うのかな。それとも、お前の手引きで支配しようと言うのか」

「そんなはず……!! 」


怒鳴ろうとして、やめる。
腕にいるジェイダが目に入ったのだ。

それにしても、頃合が良すぎる。
今回の訪問は極秘だったはず。
キースのせいで一部の国民にはバレたが、まさかもう国外まで広がっていようとは。


(……キース? まさか、そこまで……)

そんなことをして何になる。
ロイに言わせるなら、キースは馬鹿だ。


『私が仕えるのは、この国です』


大変結構なことだ。
自分に仕えてほしいなど、微塵も思わない。
だからこそ、そんな真似はしないと思いたい。


「とにかく、今は行け。時間が経てば、お前が拐われたとトスティータに連絡がいくらしい。それはこちらにしても、得にはならない」


全く起きる様子もないジェイダを抱き上げる。


「訊かれたら、答えられるようにしておくことだ。……父は私と違って、冗談の通じる人間ではない」


「……分かった」


穏和に見えるクルル王を思い出し、寒気がする。だが、今はそんな場合ではない。


「レジーも連れていくよ」

「構わん。どうせ、何の情報も与えていない。だが、もしもこの国を貶めようとするなら……」

「そんなことするものか。ここにいる誰も」


キャシディはそれには応えず、興味をなくしたように身を翻す。
ロイも喚くレジーを黙らせ、部屋へと向かった。


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