翡翠の森

「使いを出すのも不自然ですね」


どうなっているのか確めたいが、この時期に人を送るのも躊躇われる。ロイ自ら外に出るなど、論外だ。


(うーん……。何か、そもそも忘れてるような)

《誰が、ジェイダを呼んだと思ってるのさ》


頭の中に、呆れたような高い声が響く。


(……あ、そうだった)


森の大精霊がいたではないか。
都合のいいことに、アルフレッドにはマロのことがバレている。
本人が信じていようがいまいが、この際関係ない。


(頼んだ)

《大精霊をこき使いすぎだよ。……ったくもう
、人間は……》


自分から言い出したくせに、ぶつくさいつもの文句を述べて開始したアルフレッドとの通信は、どうやら難航しているようである。


《あぁ~っ、もう! 適応能力に欠けるなあ、王様のくせに。いい加減、慣れてもらわないと困るよ! 》


ポケットの中で、マロのくるんとした瞳が何とかしろと訴えていた。


(……アル)

《……ロイか。本当にあのリスは……いや、いい。それより、そちらの様子は》


ともかく話をする気になったらしい。


(ちょっとまずい。僕らが北と共謀して、クルルを落とそうとしているなんて噂が……)

《……まるっきり、ただの噂でもない》

(……何だって? )


耳を疑っていると、アルフレッドが苦々しく続けた。


《……エミリアだ。どうもあいつの家は、北と繋がりを持ったらしい》

< 228 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop