翡翠の森



ジンとデレクは、気を遣って席を外してくれた。
すぐそこにいるのだろうが、自分とレジーを信じてくれたようだ。

ジェイダは、まだ目を覚まさない。
ベッドに横たえたまま、ピクリとも動かない彼女が心配だった。


(目を開けて)


そう思うのは、勝手なことだ。
このまま眠らせてあげた方がいいだろうに、あの黒い瞳を見て、声を聞きたくて仕方ない。


「……お前、俺がいるの分かってて、よくやれるな」


そっと目元に唇を寄せれば、レジーが苦々しく言った。


「あ、ごめん。僕、そういうの全然気にしないタチ」

「俺がしんどいっての」


溜め息も気にならないどころか、嬉しいくらいだ。


「……親父もそうだった」


ぽつりと漏れた言葉に、目を伏せる。


(ロドニー)


優しくて、大きな人だった。
けれど、毎日一緒にいたレジーは、彼のもっと色んな表情を見てきたのだ。


「ロドニーが好きになった女性か。どんな人なの? 」


会ってみたかった。
ロドニーとレジー、それからジェイダを連れて。
もう叶うことのない夢が、ロイの胸を締めつける。


「俺が言うのも変だが、綺麗な人だったよ。のんびりしてるようで、はっきりしてて。親父の方が言い負かされるくらいの」


その場面を思い出したのか、レジーが小さく笑った。

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