翡翠の森



・・・



ロイは、堪らず床を思いきり殴りつけた。
ジェイダの生い立ちが、そんなものだったとは。それではまるで――。


「……そうさ。あいつは、祈り子に選ばれたんじゃない。祈り子になるべく、育てられたんだ」

「……っ……」


そんなこと許されない。
誰が何と言おうと、絶対に許さない。


『祈り子だから、美人が来ると思われていたのは、どうにかならないものかしら』


帰国して思うことは他にあるだろうに、ジェイダはそうぼやいていた。


『たまたま都合よく、私がいただけなのにな』


そう、たまたま――……。
そうである、はずだったのに。


『僕が可愛いと思うだけじゃ、足りない? 』

『……すごく複雑』


頬を染めて、ぷいっとそっぽを向いたかと思えば、すぐに忘れてしまったかのように、こっちを見て言ったのだ。


『でも、選ばれたからみんなに……ロイに会えたんだもの』


にっこり笑って、そんなことを言う彼女は美しかった。
辛抱できず、力のまま抱き寄せてしまいたくなる反面、あまりの輝きに弾かれてしまいそうな。

そんなもどかしさを覚えるくらい、彼女は綺麗だ。

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