翡翠の森
「そういえば、初めてロドニーに会った時」
彼はこう言った。
『君と同じくらいの子供もいる』
――と。
勝手にレジーのことだと思い込んでいたが、見る限り、レジーはアルフレッドと同じ年頃だ。
今こうして並んでみると、見た目はそう変わらないかもしれない。
だが、あの頃のロイは五つか六つ。
体格も全く違ったレジーを、同じくらいとは言わないだろう。
そう、あれは多分――。
「……ジェイダのことだったんだね」
『いつか、会えたらいいね』
ロドニーはそう言って、優しく微笑んでいたっけ。
「ジェイダは、親父が俺たちに希望を見たと言ったが。……お前ら二人にも、見てたのかもな」
(ロドニー、逢えたよ。素敵なお嬢さんだ)
もっと相応しい男にならなくては。
父とも慕い、尊敬する人の大事な愛娘なのだから。
(やるべきことを終え、必ず)
幸せにするから――。
「……っ、痛っ! 」
いきなり背中をバシッと叩かれ、顔をしかめる。
「仕事に戻る。一応、俺は見張りだからな」
「ったく。レジーは昔から、加減を知らないよね」
「手加減したら、拗ねるくせに」
ニッと笑う彼は、昔の兄貴そのものだ。
「……ジェイダに名乗り出なよ」
その言葉に、泣きそうで困ったような笑みを浮かべ、レジーは背を向けた。
「夢を見るなら、最後まで見て叶えてみせろ。……ロイ」
その名を呼ばれたことに驚いている間に、彼は外に出てしまった。
(……ああ。もちろん)