翡翠の森




・・・




「ん……」


目が開いてもなお、頭が働かない。


(ここは……)


どこだろう。
何をしていたのだったか。
身動ぎすると、しっかりと繋いだ手に引き留められる。


「あ……」


ロイ。
自分こそ大変だっただろうに、ベッドの脇で突っ伏していた。

あれから、どうなったのか。
徐々に記憶が蘇るにつれ、とても悲しくなる。


(……苦しいだろうな)


ロイの心情を思えば、ジェイダまできゅっと心臓を掴まれるようだ。

レジーとは和解できただろうか。
意識を失う寸前、レジーのロイへの態度は和らいでいたような気がする。
だが、辛いことにやはりロドニーは……。


「……ん、ジェイ……」


そこまで考えた時、彼の唇が動きヒヤリとする。


(寝言か)


それが自分の名前だったことに、くすぐったくなると同時に切なくもある。


「おやすみ、ロイ」


(どうか、悲しい夢は見ないで)


前に、彼が施してくれたような暗示。
恥ずかしいけれど、自分の夢だったらいいなと思う。
彼にだって、悲しみや辛さを忘れる時間は必要だから。夢であるなら、尚更だ。



< 240 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop