翡翠の森
「酷いな。婚約者と二人、ベッドの上だっていうのに」
さっきまで、床に座ってベッドを貸してくれていたくせに。
紳士的なのか、それともやっぱり男だということなのかよく分からない。
「ほら、早く。こういう時は、時間が経つほど要求が大きくなるってお約束だよ」
どこまで彼は求めているのか。
ちょっぴり試してみたい気が、しないでもないけれど。
「今なら、唇にキスで許してあげる」
「いきなり、そこからなの!? 」
……とても、試すなんて無理だ。
ほっぺにキス、くらいから始めてほしいと思うのは、自分が幼稚なのだろうか。
「ほらほら。そんなこと言ってる間に、第二段階にいくよ。そうだな、舌を……」
(進みすぎ……!! )
「~~っ、黙ってて!! 」
ピタッと大人しくなるロイに、素早く唇を重ねる。
「はい、目覚めたでしょ!? 」
幼いと言われようとも、こちらは恋愛初心者だ。
それを舌――いや、どうとか言われても困る。
(私からなんて……って)
彼からのことを思い出しそうになり、ジェイダは雑念を振り払った。