翡翠の森
責任感や罪悪感から泣けないのなら。
それを全て、取っ払ってあげたい。
「お父さんのこと。ロイが嫌じゃなければ」
高慢かもしれない。
晒け出してほしいと思うのは、身勝手かもしれない。
でも、我慢はしてほしくなかった。
父の死を知ってなお、気遣って冗談を言うロイが切なすぎて。
「……ジェイダ」
少し強めに抱き寄せられ、顔が彼の胸に押しつけられる。
「考えなかった訳じゃないんだ。……なぜあの日、ロドニーが来なかったのかを」
ジェイダはそっと、彼の背を抱き締め返した。
頭に浮かんでは消し、浮かんでは消して。
これまでずっと、彼は突き進んできた。
「……レジーが僕を恨んだのが、よく分かる。誰かを恨み、その後ろにある国を憎んだって、道は見えないどころか塞がるだけだ。そう言っているこの僕が」
更に強く、後頭部を抑えられる。
「ここまできた今、何かを呪いたくて仕方ないんだ」
恐らく、ずっと堪えてきた本音。
これを逃せば、もう二度と彼は吐き出せない。
だから――。
「憎くて憎くて堪らない。祈り子なんてものが、いつまで経っても進展しないこの国々が。……こんな考えこそが原因だと知っているのに」
今この時だけは、いったん下ろしたっていい。
放り出したっていいのだ。
そして今度は半分こして、一緒に立ち向かえばきっと。諦めたことにはならないから。