翡翠の森
「ありがとう。……僕も、それに恥じないようにする」
涙やこれまでの憤りを振り払うかのように言われ、急いで首を振った。
「私の前で無理は……」
強がってほしいのではない。
他の場所、他の人の前では頑張らなくてはいけなくても。ここではロイは、ロイらしくいてほしい。
「そうじゃないよ。それに君こそ」
「私? 」
自分こそ、それほど無理はしていない。
ロイをはじめ、周囲の人達に助けられてばかりだ。
「私は平気……」
「嘘だ」
ぴしゃりと言われ、首を傾げる。
「辛いことも悲しいことも。この短い間に、一気にたくさん経験したはずだ。なのに君は……あれまでずっと泣かなかった」
それはロイがいたから。
悪口も批判も、彼が盾になり受けてくれた。
目隠しも、耳を塞いでくれたりもした。
(だから、ロイがいなくなったら私は)
「僕を想って泣くなんて可愛いし、正直すごく嬉しいよ。……でも君は、頑固で我慢強いから。笑っていることに、慣れすぎてる」
彼が消えて混乱したし、心細かった。
レジーと対峙した時の心境を思うと、やるせないけれど、泣くなんて――。
「……ロドニーが亡くなっていたことは、ジェイダにとっても辛いはずだよ」
「それは……」
もちろん、悲しい。
全く知らない人の訃報でも、心は重くなるものだ。
ましてロドニーは、一方的とはいえどジェイダには知り合いも同然だ。