翡翠の森
「僕らに気を遣って、泣かないんだろ。……ロドニーの死では」
当たり前だ。
彼らと自分では、ロドニーとの距離が違いすぎる。
息子である二人が堪えているのに、真っ先に涙を流すなんてできなかった。
「泣いたし、喚いたわ」
レジーがロイを傷つけた時、大騒ぎしてしまった。
止めたのは後悔していないが、兄弟間で大切な話もあっただろうに、終いにはぶっ倒れた。
「それとこれとは別。君……だって、ロドニーを悼む権利があるんだ」
何かを抑えるように、髪を撫でてくれる。
彼の気遣いに、甘えたくはなかったのに。
「……っ、ふ……」
駄目だ。
大事な人を奪われた彼の前で、他人である自分が泣くなんて。
そう思うのに、彼の手に促されてしまう。
促されるまま、次々に涙が生まれてしまう。
「ジェイダ」
名前を呼ばれて、あやすように頭や背中を撫でられて。
彼の動作ひとつひとつが、涙を溢れさせていく。
「……ごめんなさ……っ」
こんなの、嫌なのに。
しゃくりあげる音も、大きくなる。
「何も謝ることはないよ。……ありがとう、ジェイダ」
お礼を言われるのは変だ。
けれども、その言葉に救われた。
涙を拭うことはせず、ただ擦ってくれるロイの優しさがとても嬉しかった。