翡翠の森



・・・



ロイに知らせるべく、事の真相を問い質す為にアルフレッドは妻を呼んだ。

どれだけ注意深く、最善の相手を選んだとしてもこの可能性を捨てたことはなかった。
先代、先々代と遡り、王家に忠実だった家でも同じこと。
次の当主が変わらず忠臣であるとは限らないし、そもそもアルフレッドはそれを望んでいなかった。

そうは言っても独り身は許されず、妃を迎えてみた結果がこれだ。
もっと言うなら、最善の相手など存在しないのだ。


(……私の責任、で済む問題ではない)


数歩後に続く、エミリアについても然り。
ロイも自分も、最初から疑っていたはずだった。

――情が移ったのか? そんな考えを振り払う。

自分で言うのもなんだが、それほど甘くも優しくもない。
城という大きくとも狭いところで、アルフレッドは生まれ育った。
光と陰を見ることもあったし、暗い側面ばかりを目にし続けたこともある。
そうこうするうちに、いつしか裏切りに対する耐性もついたと思っていたのだが。


『アルは、情に脆いところがあるから』


そういえば昔、ロイに言われたことがあった。
散々困らされ、からかわれた後、奴はぬけぬけと言ってのけたのだ。


『いくら、僕が可愛い弟だからって』


――悪さをしたら、非情な処罰を言い渡すくらいできるようにならないと。

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