翡翠の森
(……あの時は、何と答えたか)
『私にそんな真似をさせるな。悪ガキめ』
ああ、そうだ。
ロイには立場上、悪いことをしたこともある。
憐れむなと叱られそうだが、歳が離れているのもあり憎みきれない。
『ま、僕はしないけどね』
ロイも冗談にして終らせていたが、もしかしたらこうなることを想定していたのか。
「座れ」
もし、万が一にもそんなことがあったとして、弟を処罰などできるのか。ならば、他の身近な人間ならどうか?
仮にも妻である、彼女なら……?
「座れと言った。……すぐに終わらせるつもりはない」
立ち尽くしているエミリアに命じると、戸惑うように辺りを窺う。
そして、諦めたようにベッドに腰を下ろした。
見せかけであっても、ここは夫婦の寝室。
アルフレッドにも、他に場所は用意されていないのだ。
座るのも、横になるのも、二人一緒に。
寄り添うことを目的としたこの部屋で、これから二人はどうなろうというのか。
(……いや)
そう悩むこと自体、おかしいのだ。
大きく息を吐くと、アルフレッドもまた観念して隣に腰かけ、エミリアが口を割るのを待った。