翡翠の森
「ええ。その為にお呼びしたのですから」
《……コイツ……! 》
ほっと息を吐いたと同時に、頭の中で聞こえてきた。
(マロ……? )
《人間って、ほんと愚かだ。どうしてこう、自ら破滅へと向かっていくのか理解できないよ》
穏やかではない言葉に、ロイと顔を見合わせた。
「やはり貴方は、祈り子を拐うべきではなかった。同盟だけならば、女一人で何か変わるものでもないのに」
どういうことだ。
意味が分からずその顔を見て、ゾッとする。
血走った目。
唇の端は上がっているが、その微笑は醜く歪んでいる。
「おかげで、まずはこちらを何とかせねばなりませんね。残念ですが、同盟どころではない」
(……なに……!? )
轟音。
これは地響きだろうか?
まさか、干ばつ以外にも、この地で何か起きようとしているのか。
「……っ……ジェイダ! 」
何が何だか分からずにいると、ロイに強く抱き寄せられた。
「一体全体、どうしたことか。これではおよそ、同盟など夢のまた夢だ――」