翡翠の森
(綺麗)
淀みのない、美しいアイスブルー。
ジェイダも大好きな色だが、濁らせない為に彼がどれだけ苦労したのか。
「ご存じかもしれませんが、私の国では雨も日陰も有り余っている。助けてはもらえませんか? 」
辛さも悲しみも見せず、ロイもまた一人一人に目を遣りながら話す。
彼はけして、力は使わない。
けれど、いや、だからこそ強いなと思うのだ。
「そうすれば、もう祈り子なんていらない。上手くいかなかったら……次は誰が選ばれるのか。ビクビクしなくったっていい」
女性たちの目が彷徨う。
このまま、ジェイダが任期を終えたとしたら。
果たして何年間、祈り子は不在でいられるのか。
言い伝えでは百年に一度だが、この暑さではそれすらも不安になる。
第一、レジーの母・ジェマの死から数えても、二十年すら経ってはいない。
もしもまた、そう遠くない将来、こんな事態になったら?
議会で祈り子を決めることになってから、平民の娘が選ばれがちらしい。
議員が納得しないからだ。
誰だって、自分に近しい人を選びたくなどない。
「……本当に、祈り子はなくなる……? 」