翡翠の森
宣言
可愛らしい声がして、ジェイダは振り向いた。
「兄上、空が泣いてます。これも雨? 」
「……ああ」
キャシディが肩車をしてやると、声の主は珍しそうに空を見上げた。
「……ニール様? 」
キャシディの弟。
クルルの第二王子。
目を細めるキャシディを見れば、やはり似ている。
(こんな表情もするんだわ)
初めて会ったのがああだったから、苦手意識をもっていたが。
それは、キャシディのただの一面にすぎないのだ。
彼には彼の立場があり、発言の幅も限られているのかもしれない。
(まだまだ、だな)
何度も反省したはずなのに、つい色眼鏡で見てしまう。
「雨、よかったですね」
ニールの素直な一言に、キャシディとロイが顔を見合わせた。
「……そうだな」
「うん」
つられて仰いだ皆の頬に、雨粒が落ちる。
目に入りそうになって慌てて閉じれば、ロイがクスッと笑って拭ってくれた。
考え方の癖はもはや染みついていて、なかなか直すのが難しい。
それでもその気持ちがあれば、きっと。
喜びを共有することだって、できている。