翡翠の森
「まったく、祈り子など役に立たない」
キャシディの言葉にギクリとする。
「……キャシディ? 」
すぐさまロイが反応し、庇うように後ろに隠してくれた。
だが、キャシディの言うことは正しい。
祈り子としては、実際何の役にも立っていないのだから。
「これでは、アルバートが雨を降らせたようなものだ。まさか、前回もお前が祈祷でもしていたのではないだろうな? 」
砕けた言い方だが、ロイの表情は固いままだ。
何を言い出すのかと、キャシディの動向を探っている。
「所詮、ただの生娘か。大昔に一人くらい、本物がいたのかもしれないが。そんな確率で当てにするだけ無駄だな。……もう、選ぶ意味はない」
前半は引っ掛かるが、それどころではない。
事実上、祈り子を廃止すると言ったも同然だ。
「……キャシディ! 勝手なことを言うな」
国王までもが登場し、その宣言に皆が反応する間もなく緊張が走る。
「……ニール、戻れ」
弟を降ろし、キャシディはゆっくりと父を振り返った。
「なぜです? ただの女を、崇め奉る意味などないでしょう。現にこの女が何もせずとも、こうして雨は降っています。アルバートの演説中に」
「……心の中で祈ったのだろう」
キャシディに無言で問われ、ジェイダは首を振った。
「……いいえ。雨のことよりも、今は同盟が正しく結ばれますようにと」