翡翠の森
恐ろしい形相で睨まれたが、ジェイダは負けじと睨み返す。
「彼女はここにいる皆と、何も変わらない。辛い立場であるにも関わらず、一生懸命頑張ってくれた……ただの女の子だ」
それを支えるように、ロイが腰に腕を回した。
怯んではいけない。
認めてはいけない。
「……何を馬鹿な」
自分の為に。
ここにいる人たちの為に。
「無作為に選び、有無を言わさず役目を押しつけただけの女性だ。都合よく、不思議な力をもっている訳がない」
大切に想ってくれる人の為に。
「無作為などではない! その女は、前の祈り子の……っ」
ロイが息を飲む。
「え……? 」
だが、当の本人はポカンとするしかできない。
どうして皆が凍りついているのか、ジェイダには見当もつかなかった。
「……何だと」
最初に声を発したのはレジーだった。
「なぜ、それを知っている」
ワナワナと震えるレジーを、ただぼんやり見つめるしかできない。
「……おいで」
「ロイ……? 」
反応できずにいると、ロイが見かねたようにぐっと抱き寄せてきた。
「こいつが前の祈り子の娘だと。……何で、王様なんかが知ってんだ……っ!? 」