翡翠の森



・・・


だが、それは叶わなかった。


「……むす、め……? 」


レジーは今、何と言ったのか。
同じ言葉を繰り返したはずなのに、頭はまるで理解してはいなかった。


「……お前がやらせたのか。まだ何も分からない、妹まで……!! 」


娘。
妹。

一切の思考能力は停止しているのに、体はカタカタと震えだす。


「ジェイダ……」


何かが頭を過った気がする。
ロイに支えてもらわねば、ぺたんと座りこんでしまいそうだ。


「なら……なら、二人を殺したのも……っ」

「そんな……どうして……? 」


ぐちゃぐちゃで何も考えられないくせに、恐ろしいことは瞬時に思いついてしまう。

二度と、役目を放棄して逃げる者を出さない為に?
それとも、ただの見せしめだった?


「……っ、レジー!! 」


もはや自白も同然の顔色を見て、レジーは国王目掛けて走りだした。


「……やめるんだ」


だが、ロイの方が近い。


「……くっ、離せ……!! 」


暴れるレジーを、ロイは力の限り押し戻した。

< 274 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop