翡翠の森
「何で止める!? お前だって、憎いはずだろ……!? 俺の……俺たちの……」
「ああ、憎いさ……! 」
その叫びに、ジェイダは堪らず胸を押さえ込んだ。
「僕だって、彼を父親だと思っている。こんな僕を叱り、褒め……愛してくれた。……憎いよ」
「だったら!! 」
制止を振り切ろうとするレジーに、ロイは歯を食い縛る。
「……だから……!! 」
かなりの力なのだろう。
ギリッと奥歯を噛む音が、聞こえそうなほど。
「やめてくれ。どんな罪人だろうと手に掛ければ、今度は君が罪人になる」
「構うものか! 俺には、何も……」
「頼むから!! 」
異国の青年が怒鳴り合っている。
心配そうに見つめる人。
何事かと、興味津々の人。
もしかしたら何となく察しているのか、辛そうにしている人。
皆、二人のやり取りを見守っていた。
「……これ以上、僕らに失わせないでくれ。君がまだ、どこかで僕を恨んでいるとしても、僕は会えて嬉しい。それにジェイダだって」
レジーの視線に戸惑いを隠せない。
俯くなんてできないのに、まっすぐに見つめる勇気もない。
「やっと会えたんだろ。僕は彼女を大事に想うけれど、肉親にはなれない。……それはもう、レジーだけだ」