翡翠の森

レジーのことは、ロイのもう一人の兄だと思っていた。
自分の兄でもあると突然言われても、どうしていいのか困ってしまう。

そんな、いきなり血の繋がった――……。


「……兄さ……」


家族なんて。

ぽた。
ぽたり。

また、雨が降っている。


(私が祈り子なんて、本当に馬鹿みたい)


雨を降らせるどころか、この目から雫が滴り落ちてくる。

もし……もしも、あの場にレジーがいたなら。
彼は反対してくれただろうか。
満場一致だったという、祈り子を決める会議。
ロイや皆が怒ってくれたみたいに、この国でたった一人でもいい。


(嫌だった……? )


「……くそっ……! 」


勢いよくロイの腕を振り払い、射るかの如く国王を睨む。
そして再び悪態を吐いたが、レジーは背を向けるだけだった。


「キャシディ」

「……ああ」


ほっと息を吐くと、ロイがキャシディに声をかける。


「聞いてのとおり」


その声に、食い入るように見つめていた彼らもハッと我に返る。


「トスティータと戦になるなどデマだ。そうだな、アルバート」

「絶対にさせない」


満足げに頷くと、キャシディはゆっくりと周囲を見回した。

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