翡翠の森
・・・
「……非常に間の抜けた演説だった。私を巻き込むとは、どうしてくれる」
皆が散り散りになってから、キャシディは不機嫌だ。
「そんなこと言って。キャシディもしっかり拍手してくれてたじゃない。なーんだ、結構いい奴だったんだね。知ってたら、もっと早く親友になれたのに」
「誰が親友だ! 私の意思を無視するな」
ロイの茶々に、真っ赤になって怒鳴っているが。
(……本当、一生懸命手を叩いてくれてたような)
実際、キャシディがそうしてくれたのには、大きな意味がある。
彼が拍手してみせたことにより、人々はそれに倣うことができたのだ。
「ありがとうございました」
嫌な人だと思っていた。
女一人の命など、何とも思わない人間なのだと。
(好き好んで、そんなこと口にしたい訳じゃなかったのよね)
天秤にかけてはいけないことがある。
それでも彼は、選択せねばならないこともあったのかもしれない。
「礼は不要だ。……ご両親のことは申し訳なかった。そんな言葉で済むはずもないが」
すぐ後ろで、レジーが拳を握り締める。
「父は退位する。殺したいくらいだとは分かって……」
「いいえ」
その手に触れようか迷い、ジェイダは恐る恐る手を伸ばした。