翡翠の森

「先に言われちゃったけど……僕も同じ気持ちです」


彼の声が変わったと思うと、その次には頭を下げていた。


「僕が相手で心配でしょうが……どうか、お願いします」

「ロイ!? 」


彼は何をしているのだろう。
それではまるで、結婚の許しでも貰うような――。


「だって、君のもうひとつの家族だろ」

「……そんな、私は……」


ロイの言葉に彼女が狼狽する。
――その先は、言わないで。


「……うん。ありがとう、ロイ」


照れ臭くて、逃げ出したいくらい。
でも嬉しいから、やっぱりここにいたい。
そんな甘酸っぱい気持ちを、消してしまわないで。


「ジェイダ!! 」


そんな気持ちをゆっくり味わう間もなく、わさわさと友人たちが集まってきた。


「いきなり消えたと思ったら……! 」


ぎゅっと抱き締められたり、怒られたりと忙しい。


「ほんとーに大丈夫なんでしょうね!? チャラチャラした王子様に騙されてるんじゃ……」

「う……酷い。でも、もう言われ慣れたわ」


そんなに不釣り合いだろうか。
慣れはするが、傷つくことは傷つく。


「……僕、そんなに軽そう? 」

「お気になさらず。ロイ様が見かけによらずお堅いことも、全然進めてないことも存じてますから」


ジンの嬉しくない励ましに、ロイは不機嫌だ。


「王子様だか何だか知らないけど! この色気も何もない、恋愛初心者を傷つけたら許さないからね! 」


泣きそうになりながらロイを睨む、彼女の気持ちが嬉しい。……色々、思うところはあるが。


「……肝に銘じておくよ」

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