翡翠の森
暢気な会話を楽しみながら、到着したのは。
「……この辺りか」
かつて、兄妹が住んでいた場所。
ロドニーとジェマの愛の巣でもあった家は、今では残骸すら見当たらない。
「正確には分からないけどな。……およそ、この辺だろ」
「……そう」
(……覚えていなくて、ごめんなさい)
夢で見た人たちが家族だったと言われても、ジェイダにはピンとこない。
(でも……ロイとも兄さんとも逢えたよ)
すごい縁だ。
父とロイの出会いも、兄と再会したことも。
ロイとこうして、恋人になれたことだって。
おかげで――。
(私、幸せです)
自然と手を合わせ、目を瞑っていた。
もしかすると、祈りとは本来こういうものなのかもしれない。
誰かに無理やり、強制するのではなく。
ひとりひとりが、心の中に宿すもの。
「ロイ……」
目を開けると、彼も隣でそうしていた。
「あ……ごめん。どこか、おかしかった? 」
そう尋ねるのを見ると、彼の国の習慣とは少し異なるのだろう。
「ううん、そんなことない。……嬉しいだけ」
だけど、何か問題があるだろうか?
彼の気持ちは伝わってくるし、きっと二人にも届いている。