翡翠の森
・・・
「ロイ、こっちです!!」
城内で、ロイの手を必死に引っ張る少年。
「待って、ニール。そんなに急ぐと転ぶよ」
後ろにはジェイダもいるのだが、小さな王子の関心はロイだけのようだ。
「こっちに近道があるのですよ! 」
「へえ、便利だね」
(ニール様、楽しそう。何だか……)
昔のロイと、父みたいだ。
「ニール。そいつは一応、同盟国の王弟だぞ。あまり失礼のないように」
微笑ましく眺めていると、キャシディが咎めてきた。
どちらかといえば、兄である彼の方が失礼な気がするが。
「いいよ。この名前、気に入ってるし」
叱られてしゅんとしていたニールだったが、ロイの一言でパッと顔が明るくなる。
「まったく。遊び相手ではないか」
「キャシディこそ、そんなどうでもいいことで叱るなんて。城の構造を知られたことは流しておいてさ」
近道なんて、教えられた人が何人いるのか。
それも、この国の人間ではないのに。
ロイの指摘に、キャシディはばつが悪そうに目を逸らした。
「本当にありがとう。近いうちに、今度は兄さんが来るかな。もしかしたら、王妃を連れて」
「それは光栄だが。……戻った後のことは考えているのか」