翡翠の森

今頃、あちらはどうなっているのだろう?
トスティータの人たちは、何を思っている?


「確かに僕らは、色んなものを抱えたままだ。……反対する声は根強いだろうね」


ジェイダがここで、裏切り者と罵られたように。
彼もまた、同じ経験をするのだろうか。


「でも……僕らの国を見くびらないで」


穏やかだが、はっきりとした声。


「敵だと思っていた国の女の子が、自分たちのことを思い、頑張ってくれた。それを知り、全く心が動かない人なんて本当に少数だと……僕は信じているんだ」


ロイと出逢ったばかりの頃も、そうだった。
彼はクルルを理解し、手を差し伸べてくれる。
一方で、自国の誇りも愛国心も持ち合わせているのだ。いや、だからこそ、だろうか。


「……そうだな。失礼した」


そう言える、キャシディもまた同じ。
この場にいない、アルフレッドだって。


(大丈夫。私たちは、前に進んでるよ)


「それに、兄のことも信用してやって。キャシディがこんなにいい奴だって、早くアルに教えてやりたいよ」


いつか、この国々を担う人々が、彼らのように仲良くなれたらいい。


(必ず叶う)


父や母が夢見たことが、絶対に。

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