翡翠の森



・・・



禁断の森を抜け、休憩と報告を兼ねてハナの宿へ寄った。


「少し、休んでいきな」


ロイとジェイダの姿に喜んだハナだったが、訃報に視線を落とした。


「あんたもお疲れさん。坊っちゃんと一緒に座ってなよ」


何か手伝おうと思ったら、ハナに先に言われてしまった。


「おいでよ、ジェイダ」


隣にそろそろと座ると、ロイがクスッと笑った。


「みんなも君も、そんなに気を遣わなくていいのに」


(笑ってるつもりだろうけど……瞳はこんなに悲しそうなのよ……? )


そう思ったが、とても言えない。
どんな人だったかもよく知らないし、ジェイダ自身、両親と揉めた経験もないのだ。


「もうずっと、距離を置いてきた。理解してもらえないままだったのは残念だけど……何て言うのかな。とにかく、心配いらないよ」


彼らしくない言い方だ。
つまり、当然ながらまだ飲み込めていない。

何かを言いかけ、やめる。
恐らく、彼が自分で気づかなくてはならないのだ。


「みんな、ロイに頼られたいのよ。側にいたいの。……声、かけてね」


早く、気がついて。
自分で思っている以上に、傷ついていることに。
過去に何があったって、平静でいる必要なんてないのだから。


(あなたに手を伸ばしたい人が、こんなにいるよ)

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