翡翠の森



・・・



「ロイ、ジェイダ……!! 」


ロイ一行がトスティータ城に着くと、待ちきれないというように、アルフレッドが駆け寄ってきた。


「……ただいま、兄さん」


久しぶりに兄の顔を見たのだ。
吐いた息は、確かに安堵も含まれていたが。


「こっちは上手くいったけど」


彼の後ろに控えている姿に、含みを持たせずにはいられなかった。


「……今後の懸念にはさせん」


兄の言葉に頷いたものの、ロイの表情は険しい。


「……僕は優しくないから。覚えておいて」

「……承知しております」


あまりにも甘い判断だ。
それでもアルフレッドが選んだ道。


「心配なさらずとも、私がおりますよ」

「キース」


それにしても、よく分からないのはこの男だ。
一体、何を考えているのか。


「とにかく中へ。思うところはあるだろうが……別れは告げた方がいい」


もう一度ふっと息を吐くと、ロイは意を決したように進みだす。

嫌いだと思っていた。
愛されていないと思ったのは本当に小さい頃のことで、愛さないようにしたのも同じくらい昔のこと。


「父としてのこの方など存じませんが」


棺を前にしても何も出てこないロイに、キースが言った。


「国を守ろうとするこの方は……悪くはなかった。もちろん、全ての選択が正しかったとは言いませんが」


庇うかのような発言に驚くと、彼は咳払いをして目を逸らした。


(確かに、国を想う気持ちは程度も考え方も人それぞれだ。……だとしても、僕は)


「僕らは違う道を行く」


何度甘いと言われようとも、傷つけ合うのではなく助け合う道を。

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