翡翠の森



・・・


それからしばらく。
短期間に色々と起き忙しかった城内も、落ち着きを取り戻しつつある。
不平不満が聞こえない訳でもないが、それもどうやら小さくなっている。


『あちらも、厳しい状況下で分けてくれるというのに。失礼にも程がある』


そう言って、国王自らがクルルからの贈り物を食して見せたりするのだから、表立つ文句などあるはずもない。

そう。
ついに、クルルから品物が届けられるようになったのだ。

とはいえ、両国とも状況は良くないし、まだ交易が行われているのでもない。
よって、今はまだ王室どうしの贈り物という形だったが。


『少しずつでも、どうにか人の手に渡るようにしよう。最初は信用できないかもしれないけど……何なら、僕が一緒に食べてもいいしさ』


国王とその弟がこうなので、最初こそ半強制に近かったけれども。
もちろん毒など入っているはずもなければ、口にしてみれば美味しい。
そうなると、感謝は自然と生まれるものだ。


『あの……お礼をするには、どうしたらいいのでしょうか』


怖々とではあったが、そう言われた日をきっと忘れることはないだろう。
――その時の、ジェイダの嬉し泣きも。

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