翡翠の森
「私は祈り子にはならない。なりたくないし、そもそも力なんてもってない。でも、きっと……架け橋にはなれる」
このままここにいて、できることは何だろう?
もしクルルに帰ったら、何かできることがあるだろうか。
何度も何度も自問しては迷い、甘い愛情表現に溺れてしまいたくもなった。
これが、自分たちしか目に入らない恋だったら……今頃そんなことを考えて、泣きたくもなった。
(でも、それは私だから)
とても理解できないものの犠牲となった、二人の間に生まれたのも。
訳の分からない役目を押し付けられたのも。
――あの森で、運命のような出逢いをしたのも。
(私よ)
「冷えきっていた二国の間で、今一番トスティータの人たちと触れ合えたのは、私だから。今は私しか、クルルで伝えることはできない。だって」
辛い。
苦しい。
言葉にするのが、こんなにも息苦しいなんて。
「ロイと一緒にいたのは、私だもの」
彼は唇を結んだきり、返事はない。
怒らせたのかもしれない。
もういいと思われたのかも。それでも。
「私も諦めたくない。……ロイが教えてくれたの」
彼と逢わなければ、何も知らないままだった。
もしかしたら、この痛みもなかったかもしれないけれど。
「……ありがとう、ロイ」
――逢えてよかった。