翡翠の森
閉じていた瞳が、パチリと開く。
ジェイダが初めて見る、アイスブルーの色。
「そんなに変かなあ。ま、僕にとっても、君は珍しいから……見つめてても許されるかな? 」
同じ年頃だろう青年にからかわれ、頬が急激に熱くなった。
「だって……会ったことなんて、なかったもの。でも、早く帰った方がいいわ。見つかったら、何て言われるか」
綺麗だと思ったことに、僅かに愛国心が咎めてくる。
太陽に弱い肌は貧弱で、その青い瞳は冷酷だと習ってきたのだ。
「……うん。でも、よかった。遠路はるばる来たはいいけど、相手にもされなかったらどうしようかと思ってたんだ」
敵国まで乗り込んで来たのだ。
彼にもそれなりの事情があってのことに、違いない。
だが、やはりここにいては危険だ。
「少なくとも君が、話を聞いてくれる人で嬉しい」
「え……? 」
どういうことだ。
それではまるで、自分に会いに来たみたいではないか。
ただの町娘にすぎない、ジェイダに。
「初めまして。僕はロイ。君を迎えに来たんだ――クルルの乙女」