翡翠の森
・・・
「行かないで! 」
手をできるだけ伸ばしたところで、ハッと目が覚めた。
「ジェイダ? 」
何事かと、ジンが駆けつけてくれる。
恥ずかしいことに、ジェイダはベッドで寝そべったままだ。
「ごめんなさい。何でもないの」
(また……夢)
ぼんやりと自分の指先を見つめたが、内容がよく思い出せない。
叫んでおきながら、誰を呼び止めたかったのかすら記憶になかった。
けれど、どこか懐かしい。
(クルルの夢……かな)
トスティータにも幾らか慣れたが、あの熱が、光が恋しくなる。
あんな夢を見たのは、昨日の件もあって、ホームシックになっているせいかもしれなかった。
朝食後、温かいお茶を頂きながら思う。
ここに来てからというもの、ほとんど動いていない。――ロイとの追いかけっこを除いては。
(うーん……)
思わず、お腹に手をやる。
こんな時に、体重など気にしても仕方ない。
それでも一度気にし始めると、止まらなかった。
(……馬鹿ね。十日の命かもしれないのに)
そう思って、急いで否定する。
そんなことはない。
だって、雨は降るのだから。
「ちょっと出かけてくるね」
「どこへ? ……って、私も行くに決まってるでしょう」
今更逃げたりはしないし、何よりジンだって、ずっと一緒では疲れるだろう。
「……ジェイダ。護衛の意味、分かってる? それとも、クルルでは別の意味? 」
次の言葉は分かる。
『私はジェイダの護衛なのよ』だ。
ジンは正しい。
心配してくれているのも、分かっている。
けれど、彼女にも休息は必要だ。
護衛であれ、何であれ、年頃の女性なのだから。
「ジンもたまには、休憩したら? 気晴らしとか」
「あのね、私は貴女の……
きた。
と、同時に、ドアがノックされた。