翡翠の森

「そうなれば、早い方がいい」


そう言うと、アルフレッドはさっさと部屋を出てしまった。


「……アルにはきついことだ。でも、どれほど申し訳なくても、アルが嫌がったとしても……兄さんじゃなきゃ駄目なんだ」


ジェイダの目には、ロイだって素質があるように見える。


「仮に僕が、第一位で継承権をもったとしても、やっぱり無理じゃないかな。誰かの上に立ったり、管理したり……できそうにないよね」


おちゃらけて言うロイを、今はもう軽いとも不謹慎だとも思わない。


「ロイの存在は、ロイ自身が思うよりずっと大きいと思う。トスティータだけでなく、クルルにも」


彼のおかげで、未来はきっと変わる。
彼だからこそ、ジンもデレクも側で助けたいと思うのだ。


「ありがとう。でも、アルはいい王になるよ。父の代でもそうだったなら、もっと早く事態は好転しただろうにね」


軽蔑しているようにも、軽蔑しようと苦悩しているようにも見えるロイの話に、ジェイダは耳を傾けた。

「話もできなくなって……できなくても良くなって、どれだけ経ったか。ま、僕には、親代わりがいたから」


デレクのことだ。
ちょっと見ただけだが、ロイに心から愛情をもっているのが伝わってきた。


「……君は……」


言い淀む彼に、笑って首を振る。


「両親は亡くなったって。……だから、選ばれた」


ロイが唇を噛む。
明るい調子で言ったつもりだったし、本当に気にしていないのに。


「あ、でもね。任命された直後よりも、今の方が気が楽なの。変かもしれないけど」

「変すぎるよ」


すぐさまロイは肯定したが、ジェイダ自身はそれほどおかしなことだとは思わなかった。自分も同じなのだ。


(だって、ロイがいるから)



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