翡翠の森

「うん。二人が成長するにつれ、ご多分に漏れず内部のゴタゴタはあったけどね。僕が向いていないのが分かると、それもサッと引いたし。……いくら邪険にしても、アルは様子を見に来てくれた。口下手なくせにね」


懐かしみながら語るロイを見つめながら、二人の幼少時代を想像する。


「最初は嫌いだった。どうあっても敵わないし……皆の態度も違ったから。でも、分かったんだ。何か大きなものを手にすれば、それ相応のものを背負うことになる。……今回みたいに」


国王にならなくてはいけない、アルフレッドの気持ち。
国王になることができない、ロイの想い。
どちらも比べることなど不可能なくらい、重くて辛いのだろう。


「……お相手、素敵なお姫様だといいね。ううん、きっと、そうだと思う」


ロイにすれば、面倒を全て兄に押し付けたようで、心苦しいのかもしれない。
何とか励ましたかったが、またも場違いな話題が口を突いてしまった。


「そうだね。どうせ、良家のご息女が来るんだろうけど。あのアルが、好きになれる人ならいいな」


無理矢理明るくした声に、気づかないはずはない。
気持ちを切り換えるのは難しいだろうが、ロイはそう合わせてくれた。


「そういう点でも、僕は恵まれている。あのまま君に会わなければ、大差ない道を歩んでいた」


妃殿下に劣ることのない、家柄と美貌を兼ね備えた姫君。


(いつか、ロイも……? )


胸は正直だ。
頭では否定しているのに、ズキリと痛むのだから。


「でも僕は、大人しそうな顔してむちゃくちゃな君が好きだ。せっかく用意したものを投げ捨てて、飛び出していく。王子様面した僕が嫌なんて……」

「ごめ……」


何てことを言ったのだろう。

素顔のロイを見たい。
そんな意味だったが、彼が悩んできたことも知らずに。


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