翡翠の森
・・・
夜が明けるのが、待ち遠しかった。
実を言うと、あのまま押し入りたくて仕方なかったのだが、何とか自制した。
さすがに深夜、乙女の寝室に入り込む訳にもいくまい。
「おはようございます、ロイ様」
「おはよう。ジェイダは起きてる? 」
「はい。どうぞ」
ジンが通してくれる、そんな短い時間さえまどろっこしい。
彼女はすぐに気がついて、クスッと笑われてしまった。
「ロイ? 」
そんなやり取りが、耳に入ったのだろうか。
ジェイダの方から、ドアの外へひょこっと顔を出してくれた。
「おはよ、ジェイダ。朝早く、ごめん」
「おはよう、ロイ」
軽く首を振ると、にこりと微笑んで返してくれた。
早朝、突然訪ねたのに、嫌な顔ひとつしない。
『ロイ』
彼女にその名を呼ばれると、コトリと胸が心地よく音を立てる。
「ジェイダ」
何かあったのかと、少し不安げな彼女をロイはぎゅっと抱き締めた。
「……っ、ロ、ロイ? 」
狼狽えるジェイダに説明する間も惜しみ、ただ彼女を抱いていた。
半分開いたままの扉や、他の目など知るものか。
(ロドニー、レジー。早く見せてあげたい)
――僕の、大切な人を。