翡翠の森
王妃
・・・
ロイが訪れる、その日の朝のこと。
ジェイダはまだ夢の中にいた。
子供の声がする。
金髪にアイスブルーの瞳が美しい。
何もないただの森で、彼は楽しそうに笑っていた。
側にいるのは、父親だろうか。
短い腕を懸命に広げて、彼の腰にしがみついている。
『こら、落ち着いて。僕はどこにも逃げないよ』
だが、違った。
足下から辿ってみれば、一目瞭然。
(クルルの男性。それに、あれは……)
この前の夢で、男の子を追いかけていた人だ。
二国の有り様に怒り、嘆いていた。
(仲良しになったのね)
夢だというのに、本当の親子に見える彼らが嬉しい。
(こんな未来が、早くこないかな。ロイがすごく喜びそう)
そういえば、あの子は何となくロイに似ている。
(……やだな。私ってば)
何の気ない考えに、この光景がいっそう愛しく思えるなんて。
「……あ……」
心の声が漏れたのか、男がジェイダを見て微笑みかけた。
『……大丈夫』
君達なら、きっと。