翡翠の森
・・・
「どう思う? 」
ジェイダとエミリアが退出し、続くジンにロイは目で合図を送る。
彼女は軽く頷いた後、二人を追いかけて行った。
「まず言っておきたいんだけど、僕は褒められた性格はしていない」
「分かりきった前置きはいらん」
率直な意見を求められ、大きく息を吸って静かに首を振った。
「……好意的すぎる」
誰に、と尋ねるまでもない。
――ジェイダにだ。
「エミリアの家系は、これまでに何度も王家との婚姻に名が挙がってきた。前国王はクルルとの関係に否定的だったし、それに気に入られる教育は受けてきたはずだ」
「だが、あと一歩のところで選ばれなかった家だ。他に良家があるせいで、マクライナーが手を伸ばさなかった」
「だね。でも、これを好機と思っているはずだよ。少なくとも、彼女の後ろ楯は」
それが、あのように突然抱きつくなど。
「僕らの手前、かもしれないけど。それにしても、抵抗がなさすぎる。偏見のない、余程真っ直ぐな子なのか、もしくは――」
――誰かに送り込まれたか。
「……ああ」
信じられる側近と調べ尽くしたつもりだが、言ったようにその後、ということもある。
「ジェイダは、もう忘れちゃってるんじゃないかな。彼女に気をつけてほしいことなんか」
苦笑したのは彼女が忘れっぽいからでも、人を疑えないからでもない。
「僕が陰でこんなこと言ってるって知ったら、傷つくだろうな。嬉しかったに決まってるのに」
そんなジェイダの素直さを踏み潰すような発想しか、この頭には生まれないせいだ。