悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました

 温かい言葉に胸が締め付けられる。

 優しい彼らを巻き込めない。ランジェット夫妻は町工場で働いており、その職場を仕切っているのはカティアの父親であった。

 決して裕福ではないのに、血の繋がりもない私をここまで育ててくれた恩を返すときだ。


「ごめんなさい。こんな、親不孝の別れになって」

「エスター、謝らなくていい。一緒に帰ろう」

「もう、迷惑はかけられないわ。養子の縁を切りましょう。嫌われ者は、私ひとりで十分よ」


 必死にとめる彼らに振り向きもしないで、なにも持たずに町を出た。

 振り向いたら、すがってしまいそうだった。

 悪女だと陰口を言われて、身に覚えのない罪で裁かれて、私をおとしめた人たちは笑いながらワインを飲んでいる。

 もう誰も信じない。悪役を背負って、ひとりで生きていく。婚約者を放って口説き続けた男や、嫉妬に狂って他人の人生をめちゃくちゃにした女のようにはならない。

 恋愛なんて、少しも綺麗じゃないわ。

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