悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
今までは、俺を怖がってばかりでまともに正面からぶつかってきたやつはいなかった。あの華奢な体で堂々と意見を口にして、戦い続ける姿が自分と重なって見えたのだ。
気丈に振る舞い弱さを必死に隠して陰で泣く彼女を、傷つける全てから守ってやりたい。
だが、この体はもう永くない。
残されたときがないとわかっていて、誰が人生をくれと言えようか。
綺麗で柔らかな首筋に噛みつき、食べるのが惜しいとさえ思った。
俺の存在が気高く生きる彼女の足かせになってはならない。もともと、期限付きの関係なのだ。
王としてやるべきことがある。せめて強い獣として隣国の侵攻を防ぎ、役目を果たした後、彼女の目につかないところで命を終えたい。
悲しむ者がいないよう、悪役を演じ続ける。
獣がヒトを愛するなど、許されるはずがないのだから。
「そんな顔をするな、子兎……」
別れ際に見たエスターの顔がひどく悲しげで、目に焼きついた彼女の姿がいつまでも頭から消えなかった。