悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
「愚かな子兎め。残りの命が幾ばくかもわからない俺のために、尊い未来を軽々しく賭けるな」
怒っているはずのベルナルド様の声は震えていた。
目の前の私の存在を確かめるかのように抱きしめる腕の力は強くなり、大きな身体がすっぽりと私を包み込む。
その後、暗殺計画に加担していた役人は、すべてレンテオさんの統率によりケモ耳の騎士団が身柄をとらえた。
事件は国内外に大きく広まり、モンペリエ国の幹部の身代わりとして立てられたのであろう首謀者に重い刑罰が与えられたが、それで解決となるわけがなく、エピナント国とモンペリエ国の仲は急速に冷え込む事態となった。
そして、ルビ草を違法に取引していた会社はベルナルド様により取り締まられ、私は新たな就職先から古城へと連れ戻されたのである。
やがて迎賓館での事件から三日経ち、天候が落ち着かない梅雨を過ぎた季節はすっかり汗ばむ夏となった。