悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
「おはよう、エスターさん。主がお呼びだよ」
ドミニコラさんが穏やかに笑う。
ベルナルド様はここのところずっと公務で忙しく、顔を合わせるのは久しぶりだ。
大胆な告白をしてから、ちゃんと話ができていない。あの人は覚えているのかしら?
やや緊張しながら北の塔へやって来た。重厚な扉は記憶のままで、訪れるのが懐かしい。古城にいた頃は、毎日のように過ごしていたのに。
「ベルナルド様、失礼します」
ノックをして入ると、彼は深紅のソファに腰掛けていた。「隣へ来い」と声をかけられ、ぎこちなく歩み寄る。
サラサラした銀の髪にスッと通った鼻筋と形の良い唇は、この世のものではないほど整った造形だ。
ブランクがあるからか、恥ずかしくてまっすぐ見れない。
「傷は平気か?」
「はい。ドミニコラさんからいただいた薬草の効きが良くて、きれいに塞がりました」
跡は残ったままだが、後悔はない。事件について、無謀であったと怒られたものの、騎士団や古城の使用人達からは称賛の声が上がった。
ルビ草の仕掛けに気づかなかったら、とんでもない不幸な結末になっていたかもしれない。