悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました

 故郷での私の信頼が回復したところで、周囲に敵ばかりだったのは事実だ。唯一心に引っかかっていたのは、育ての親であるランジェット夫妻に迷惑がかかっていないか、という点だけ。

 彼らはカティアの親が営む町工場で働いていた。最悪の場合仕事がなくなってしまったかもしれない。


「ねぇ、ランジェットさん達はどうしているの?」

「さぁね。彼らはとっくの昔に町を出たよ。ひとりで国を追われた君を探すと言っていたな」


 驚きのあまり呼吸を忘れる。

 迷惑をかけないためにひとりで町を去ったのに、追いかけてくれたの?

 私は、ランジェット夫妻が幸せに暮らしてくれたらそれだけでよかった。

 縁を切ったとはいえ、あの町では暮らしにくいだろうと心配していたが、今どこでなにをしているかさえわからないのは不安だ。

 ブルトーワ国を去ってからの出来事に頭が追いつけずにいると、グレイソンは無遠慮に私の手を取った。


「エスター、君はやっぱり俺の妻になるべき人だ。冤罪も晴れたことだし、嫉妬深い婚約者もいない。このまま町に戻ってこないか?」

< 182 / 217 >

この作品をシェア

pagetop