悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
故郷での私の信頼が回復したところで、周囲に敵ばかりだったのは事実だ。唯一心に引っかかっていたのは、育ての親であるランジェット夫妻に迷惑がかかっていないか、という点だけ。
彼らはカティアの親が営む町工場で働いていた。最悪の場合仕事がなくなってしまったかもしれない。
「ねぇ、ランジェットさん達はどうしているの?」
「さぁね。彼らはとっくの昔に町を出たよ。ひとりで国を追われた君を探すと言っていたな」
驚きのあまり呼吸を忘れる。
迷惑をかけないためにひとりで町を去ったのに、追いかけてくれたの?
私は、ランジェット夫妻が幸せに暮らしてくれたらそれだけでよかった。
縁を切ったとはいえ、あの町では暮らしにくいだろうと心配していたが、今どこでなにをしているかさえわからないのは不安だ。
ブルトーワ国を去ってからの出来事に頭が追いつけずにいると、グレイソンは無遠慮に私の手を取った。
「エスター、君はやっぱり俺の妻になるべき人だ。冤罪も晴れたことだし、嫉妬深い婚約者もいない。このまま町に戻ってこないか?」