悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
そんなもの?
利益を独占しようと買い占めたせいで公共のために作られるはずの薬が減り、ベルナルド様は長年苦しんでいるのよ?
怒りを抑えながら言葉を続ける。
「それが本当ならぜひ欲しいけど、二言はないわよね?」
「もちろんさ。お金はいらない。その代わり、取引の条件がある」
グレイソンはこちらへ詰め寄り、こちらを試すような瞳で告げた。
「君が俺の妻になるというなら、レドウ草を好きなだけあげよう」
ただ呆然と言葉の意味を模索して、理解するまでに時間が止まった。
信じられない交渉だ。素直に頷けるわけがない。
「ふざけないで。それが条件ですって?本気で私を愛していないのに、軽々しく妻になれだなんてありえない」
「希少な薬草を好きなだけ譲ると言っているんだ。君の人生にはそれだけの価値がある。俺は本気だよ、エスターを今でも愛しているんだ」
さっきまでレドウ草を“そんなもの”扱いしていたくせに、私の一生と交換する気なんてどうかしているわ。
こんなにも薄っぺらい愛はない。私はもっと、全身が震えるほどの本物の愛の熱を知っている。
「悪いけど、この話はナシよ。心に決めた人がいるの。理不尽な交渉を持ちかけるあなたの妻には一生ならない」