悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
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「陛下がご帰還される!夕食は肉料理に変更だ」


 その日の夜、城は慌ただしく声が飛び交っていた。

 久しぶりにベルナルド様が帰ってくるとの情報を聞きつけ、使用人たちがそわそわと準備に追われているようだ。好物をはりきって用意するコックに微笑ましくなる。

 昔は緊張のあまりまともに会話ができない畏怖の対象でしかなかった陛下に対するイメージが、今では怖いけど人望のある城主へと変わったらしい。

 優しい彼の一面が理解され始めているのは、とても嬉しかった。私も、はやく会って話がしたい。

 そのとき、古城に馬車が到着した。降り立ったのはベルナルド様だ。品の良い黒マントに身を包み、颯爽とエントランスにやってくる。


「ベルナルド様、おかえりなさいませ」


 思わず駆け寄ると、黄金の瞳がこちらをとらえた。私を認識した途端、ケモ耳と尻尾が姿を現す。

 しかし次の瞬間、張り詰めていた糸が切れるように彼の膝の力が抜けた。


「ひゃっ!?」

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