悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
意識の途切れた体は想像以上に重い。前のめりになった彼をとっさに受け止めるが、支えきれずに床へ座り込む。
耳は倒れており、尻尾も元気がなかった。ヒトの姿から無意識に獣化してしまうほど体力がないのだ。
シャツ越しの体が熱い。痛みに耐えるうめき声が小さく漏れている。
とても具合が悪そう。いったいどうしたの?
「エスターさん、僕が支えるよ。部屋まで一緒に運ぼう」
駆けつけたドミニコラさんが腕を肩にまわした。迎えに集まった使用人たちは、予想外の展開にざわめいている。
ベッドに寝かせて容体を観察すると、胸の痣は以前より濃くなっていた。高熱にうなされる彼の額に浮き上がった汗を拭き、指先が震える。
「悪化してるな。病を押して働いていたけど、エスターさんの顔を見て緊張が切れたのかな」
ドミニコラさんは冷静な声でつぶやく。
まさか、ここまで追い詰められていたなんて想像もしていなかった。
やがて意識を取り戻した彼はまぶたを上げる。まだ熱に浮かされているようで、視点はぼんやりしたままだ。