悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
「ベルナルド様、大丈夫ですか」
「……すまない。また城の者に醜態をさらしてしまった」
額に腕を置いて息を吐く陛下に、ドミニコラさんが尋ねる。
「ここまで症状が重いのは初めてですね。薬は毎日服用していたんでしょう?」
「あぁ。だが、飲んでも胸の痛みが治らないうえに、兵力の向上や武器の整備で休む時間がとれなくてな。全てはモンペリエ国との開戦が決まったのが原因だ」
穏やかではない発言にぞくりとした。
これまでも両国の仲は良くはなく一触即発であったが、迎賓館での事件がきっかけで大きな争いになったようだ。
汚い手でエピナント国への侵攻を企む敵に対し、真っ向から対峙する流れである。
全ては国民や領地の平和を守るためであったとしても、簡単に受け入れられる情報ではない。
「まさか、ベルナルド様も戦地へ赴くのですか?」
「獣たちの指揮は俺が取らねばならない」
こんな体で無茶に決まっている。もし、まともに動けない間に命を狙われたら。
最悪の結末が頭をよぎって血の気が引く。
しかし、ベルナルド様はひとりで騎士数十人分の戦力がある。国としても、彼が前線に出ないとなると相当な痛手だ。
周囲に病を隠して戦ってきたのも、全ては隣国の侵攻から国を守るための作戦である。この窮地をしのげなければ、エピナント国の未来はない。