悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
「とにかく、兵力を高めている間の公務は大臣とレンテオ騎士団長に任せて、療養に専念しましょう。僕も、あらゆる手を尽くして薬を作ります」
ドミニコラさんはそう言い残し、真剣な表情で部屋を出て行った。ベルナルド様も再び目を閉じて浅く呼吸をする。
みんな必死で戦っている。私に出来ることは……。
頭に浮かんだのはレドウ草だ。グレイソンの提示した条件をのむ気はなかったのに、心が揺れ動く。
彼の命と自分の人生を天秤にはかけられない。私にとって、ベルナルド様がなによりも大切だとわかりきっている。
そのとき、熱を帯びた骨張った指が無意識に動いた。ベッドサイドに腰掛けていた私の手をすがるように握られる。
放そうとしない彼に、愛しさと悲しみが込み上げた。
必要としてくれているのは伝わるのに、私が選択できるのは裏切りだけ。古城を去ると告げたら、どういう顔をするかしら。
あなたのために他の男の妻になるだなんて、恩着せがましいセリフは絶対に言えない。
愛しているから、そばにいたいだけなのに。
繋がれた手を強く握り返し、ベッドサイドで静かに泣いた。