悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
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「市場へ行きたい?」

「はい。週末に時間があれば、馬車を借りる許可をいただけませんか?」

「あぁ、もちろんいいよ。城の御者に声をかけておこう」


 翌日、薬室にこもるドミニコラさんにお願いをした。彼は、私が新たな薬草を探しに行くつもりだと勘違いしている。

 せめて、グレイソンに他の方法で譲ってもらえないか交渉してみよう。高額な対価を要求されて借金を背負うことになろうとも、大切な人の命が救えるならそれでいい。

 ベルナルド様は熱は下がったもののベッドからは起き上がれない状態だ。

 使用人たちはあえて口にしないが、以前薬室で倒れた姿も目撃しているため、なんらかの持病を抱えているのではないかと薄々察している。

 もう、誤魔化しは効かない。


 週末、覚悟を決めて市場へ向かうと、グレイソンは満足げに笑っていた。

 例のベンチに腰掛け、話を切り出す。


「レドウ草を買い取ることはできない?原価の倍以上でもいい。言い値で払うわ」

「条件を変えるつもりはないよ。俺の実家が地主だと知っているだろ?今さら、はした金に興味はないね」

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